田原市役所担当者に聞く、移住と暮らしを支えるための取り組み
移住を検討するにあたって、経済面や生活面などで不安を感じる方も少なくない。愛知県田原市では、市外からの移住者・定住者を多面的にサポートするため、さまざまな移住支援施策を行っている。今回は田原市役所の定住・移住促進担当者に、各種制度や取り組みについて話を聞いた。
移住支援制度は、移住前に田原市での暮らしについて理解を深めるための施策に始まり、先輩移住者への相談ができる制度、住居の取得や就業・就農に関する支援まで多岐にわたる。企画課が窓口となっており、相談を受けた企画課の職員が担当課や関係機関などと連携してサポートしてくれる形だ。
●定住・移住促進施策
・田原市お試し移住支援補助金
「まずは田原市についてもっと知りたい」という方におすすめの制度。市外からの移住を検討している方が田原市に滞在する際、宿泊費とレンタカー代の一部が補助の対象となる。年間合計20泊まで、条件により最大で宿泊費の2分の1が補助される。 「田原市がどういうまちなのか、実際の生活はどのような様子なのかを、実際に訪れて感じていただける制度です。実際にこの制度を利用したあとに田原市に移住された方もいますので、移住を検討するにあたっての大きな判断材料にしていただけるのではないかと思います」とのこと。
・たはら暮らし定住・移住サポーター制度
移住・定住希望者の心配ごとに対して、先輩移住者がサポートしてくれる制度。住まいや仕事に関する相談対応や情報発信、新生活のサポート、市への空き家情報の提供などを行っている。
「移住者・定住者の方をサポートする制度をつくりたいと思っていたところ、先輩移住者の方々にも『移住してくる方々に孤独感や疎外感を感じてほしくない。自分たちなら田原市の状況もわかるし、移住者の方々の気持ちもよくわかるため、相談相手になりたい』という考えがあったようで、双方の思いが合致してこのような制度ができました」
現在では行政・地域・住民が連携して受入体制を強化しており、赤羽根地区では月に一度イベントを開催。地元の方も一緒になって就農・定住・移住の相談を受けているという。
●住居取得支援施策
・田原市定住・移住促進奨励金
若者・子育て世代の移住・定住を促進するために、新築住宅の購入金額の一部を補助。本人又は配偶者が45歳以下であること、取得後5年以上定住することなどが条件となっている。各種要件を満たせば最大で60万円の奨励金が交付される。
「住宅購入費はもちろんのこと、引っ越し費用や家財の購入などさまざまな費用負担があるなかで、移住者の手助けができる奨励金制度だと思います」。田原市での新築購入の際にはぜひ利用したい制度だ。
・空き家改修補助金
「田原市定住・移住促進奨励金」は新築住宅又は建売住宅が対象だが、中古物件を改修して定住をしたいという方はこちらの制度が活用できる。
市内への定住等を目的として空き家等の利用を希望する者と、空き家・空き地の売却や賃貸を希望する所有者をマッチングする「空き家・空き地バンク制度」がある。その空き家登録物件を対象とし、空き家を改修する工事に要する費用の2分の1、50万円(市内事業者施工の場合10万円の加算有)を上限として改修補助金を交付するという制度だ。
・田原市移住支援金
愛知県の「移住支援事業・マッチング支援事業」などと連携した、東京圏から田原市内へ移住して就業・起業した人への移住支援金制度。単身では60万円、世帯では100万円、18歳未満の子どもがいる場合は1人あたり30万円が支給される。
●生活・就業支援施策
・田原市結婚新生活支援事業補助金
39歳以下の新婚世帯が結婚を機に田原市内の住居を新たに購入・賃借した場合、要件を満たすことで上限30~60万円の補助金が交付される。特に若い世代にとって負担となる住宅購入や賃料、引っ越し費用などをサポートするものだ。
・就農支援施策
移住希望者の中には、自然を楽しみながら自身が苦労して育てた作物を最高鮮度で食べられることや、時間に融通が利くことなどのメリットのある農業を仕事にしたいと考える方も少なくないという。そこで田原市では、就農希望者をサポートする取り組みも行っている。
「移住者の方は農地を持っておらず、他の農家さんとの繋がりもない場合がほとんど。まずは希望などをお聞きしたうえで、農地探しや農家さんとのマッチングを行っています。場合によっては市内の農業の状況を共有したり、農家さんとお話しする場を設けたりすることも。『ここまでサポートしてくれるとは思わなかった』と言っていただけることが多いです」
・あかばねこども園
子育て世代を支援する取り組みのひとつとして、赤羽根地区にあった3つの公立保育園を統合民営化し、2022年にあかばねこども園が開業した。「子ども達の自己肯定感を高める」ことを教育・保育のキーワードとして、独自のカリキュラムと理念で教育・保育を展開。子どもたちが主体性を持って行動できるよう、自然を生かしたつくりの園になっている。
市役所職員が考える、田原市の魅力
「実際に田原市に移住されてきた方からは、よく『田原市って、ちょうどいいまちだよね』と言われます。移住というと地方都市や、もしくは山間地域をイメージしがちですが、田原市はその両方のいいとこどりができているのかもしれません」
移住者の方に住んでみての感想を聞くと、「意外と住みやすくて、何も困ることはないです」と言われることが多いという。生活に必要な施設が整っているため暮らしやすく、なおかつ豊かな自然の中でゆったり過ごすことができるという点で、まさに「ちょうどいい」まちなのかもしれない。
「移住に関しては時間をかけて検討するかと思いますが、その第一歩として、ぜひ一度田原市に足を運んでみていただきたいです。我々職員やサポーターさんに気軽にご相談ください」とのこと。田原市での暮らしに興味が湧いたら、「田原市お試し移住支援補助金」などを活用して訪れてみてほしい。