世界を旅して辿り着いた私のパワースポット

2024.07.01

名古屋から車で1時間半の田原市は、東海地方からはもちろん、関西からも通うサーファーがいるサーフィンの聖地。2011年に移住した小川史さんは、サーフィンとカフェ、農業をルーティンに、家族と地域の人たちと充実した日々を送る。豊かな自然とそこに暮らす人たちの空気感が、サーフトリップで世界を巡った小川さんの波長とピッタリと合い、定住の地になった。

足るを知る、サーフィンのある幸せな暮らし

「朝、海で日の出を見るのが私の大切な日課です。大阪にいたころはビルばかりで空なんて見えなかった。ここでは太平洋からの日の出、日の入りの両方を見ることができます。水平線からの日の出と満月の月の入りが同時に見える光景は、僕の好きな景色のひとつです」

33歳のときサーフィンをきっかけに田原市に移住をした小川さん。今は波が良い時は一日に二度、海に入る生活を送る。
「昔は波が良くなくても海に入っていましたが、今は波が良い時しかサーフィンをしなくなりました。だって、波が良い時にすぐにサーフィンができる環境ですから」

朝は海のコンディションを確認し、畑で作物の手入れ。家族と一緒に朝食をとった後、波を捕まえに海へ。海から上がり農家レストランカフェ「DIEZ cafe(ディエスカフェ)」の開店準備に取り掛かる。夕方お店を片付けて、海に向かい波に乗り、家に帰り家族と夕食を囲むのが、小川さんの一日だ。

「必要以上は求めすぎない、何事にも満足する『足るを知る』を、田原市の暮らしで学びました。サーフィンを始めて人生がまったく変わりましたね」
世界を旅し体感したサーフカルチャーを、この地でより深く味わっている。

新しい世界を拓いたサーフトリップ

「勢いで航空会社に電話をし、気づいたら3日後にはハワイにいました」

仕事ばかりで息の詰まる暮らしに一区切りをつけたとき、やりたいことリストの中の「サーフトリップ」にたまたま目が止まる。今までの暮らしをリセットするために訪れたハワイ。初めてサーフィンを体験したのは30歳の時だった。

「海に入って自然のウネリを感じること、それがサーフィンの面白みですね」

自然の雄大さとそこに暮らす人たちの生き方に、はじめは戸惑いながらも、サーフィンがあるライフスタイルに惹かれ、新しい生き方の模索が始まった。サーフボードとバックパックを担いだ旅はハワイを皮切りに20カ国以上におよぶ。サーフトリップは自然に「永住の地探し」にもなったという。メキシコで食べたハラペーニョに感動したり、オーストラリアでエスプレッソの修行をしたりと、旅先での経験が今の暮らしの生業につながる。

人とのつながりに感謝し地域に還元したい

「住み続けたいと思ったのは、まずは人です。地域の方に『サーハーするだか?』と声を掛けていただき、交流を深めていくうちに人の良さに惹かれました。ここは自分の魂が落ち着く場所です」 最初に声を掛けてくれたおばあさんから地域との縁が結ばれ、繋がっていく。小川さんは、たはら定住・移住サポーターとしての活動をはじめ、安心して海のレジャーが楽しめるように水難救助活動に尽力したり、地域のこどもたちにサーフィン教室や農業体験など学びの場をつくったりと精力的に活動を行っている。

海と大地のエネルギーがあふれる土地

「ここは縄文時代から多くの人が定住した住みやすい土地なんですよ」

太平洋に突き出た渥美半島の自然の豊かさは海だけでなく、大地もエネルギッシュ。日本でもトップクラスの生産高を誇る農業分野は、潅水設備など農地の整備が充実する一面もある。暮らしやすさがそこに暮らす人々の寛容な気質にもつながっているのだろう。

「田原市の自然が持つ情報量はとても多いと思います。『今日は風が硬い』とか『潮の香りがする』など自然の機微を感じられる場所だから、四季を通してそのエネルギーを感じてほしいです。ぜひ一緒にサーフィンをしましょう」

小川さんはDIEZ cafeで新しいサーフィン仲間の訪れを楽しみに待っている。