彩り豊かな食卓を支える田原市の生産者たち
愛知県田原市、海に突き出た渥美半島の先端。北は三河湾、南は太平洋、西は伊勢湾と、三方を海に囲まれた自然豊かな土地に、「育てること」に頑なにこだわる2人の生産者がいる。
吉田園は年間を通じて多種多様な野菜を育て、品評会での受賞歴もある有機栽培の農園、吉田畜産は田原市のブランド豚 保美豚(ホウビトン)を生産・加工・販売する畜産会社で、どちらも「吉田」の名を冠しており、いとこ同士がそれぞれの経営を行っている。
美味しい野菜の土づくりは、豚の腸活から
吉田園の堆肥の原料となっているのはいとこが経営する吉田畜産が育てる保美豚の豚糞。農園の堆肥を近隣の畜産事業者から仕入れるという話は聞いたことがあるが、保美豚はその成育過程からこだわり抜かれている。
「健康で美味しい豚を育てるために、豚の腸内環境にも気を使っています」と吉田畜産の吉田幸伸さん。
吉田畜産が目指しているのは多世代に愛され、健康を害さない美味しい豚の生産。
そのために、抗生物質や成長促進剤などの薬を一切使用せずに育て上げている。
豚の成育過程で生まれてから一切薬を与えないというのは全国でも非常に珍しい。
さらに、遺伝子組み換えなどがされていない穀物を餌にしながら、酵素や微生物資材といった自然由来の腸活を促す栄養素をミルクに混ぜて与えることで豚の腸活を促している。人と同じで腸の健康が保たれると、免疫力が高まり、健康で美味しい豚に育つのだという。
脂が甘く、あくが出にくい田原市の誇る絶品ブランド豚、全国への発送も行っているが、ぜひ現地でも味わっていただきたい。
保美豚の豚糞に有用微生物を加え、ぬか床とのように何度も切り返しを行うことで、発酵させ完熟堆肥をつくる。約1年間かけてゆっくりと分解をすすめた堆肥は悪臭とは程遠く、ハエではなくハチが寄ってきてしまうほど。
驚いたのはハウス内の土がふかふかで、歩くたびに足が沈むほど柔らかいこと。「発見されている微生物や菌は1%未満だと言われていて、土壌の中には解明されていない微生物たちが生きている、その恵みを活かしたい」と吉田園の吉田訓章さん。
微生物や有機物らの天然の力を借りて、安心できる豊かな土から、植物自身がのびのびと育つ環境を理想としてより良い土づくりを目指している。
完全無農薬栽培を支える吉田部の仲間たち
一般的な農業のやり方と吉田園の大きな違いは除草剤を一切使わないこと。
雑草や虫による被害を防ぐため、ひとつひとつ人の手で取り除いていくのは大変な作業だ。
一度は除草剤を使おうと検討した時期もあったが、やはり有機栽培の野菜づくりにこだわりたいという想いがあり、実現の仕方を模索した。
「今は地元の有志、通称吉田部が空き時間にボランティアで草取りを手伝ってくださる」
完全無農薬の有機栽培の実現には、吉田部の存在が欠かせない。
これまでの参加者は30名以上で、移住者の方も参加をしているという。
農業が身近にある田原市だからこそ生まれるボランティアの形はときに移住者の方も参加することがあるそうで、地元の農家さんと触れ合う貴重なきっかけとなっている。
安心、安全、そして美味しさにこだわり続ける
現在、吉田園では年間を通して40~50品目の野菜を栽培しており、中には、野菜ソムリエが「美味しさ」を軸に評価し、食味が優れたものを認証する野菜ソムリエサミット(主催:日本野菜ソムリエ協会)で、「ほうれん草」はひとつ星、「春菊」は銀賞を受賞しているものもある。
都内有名シェフからも指名で買い付けのあるこだわり抜かれた生産方法による美味しい野菜と、抗生物質や薬を一切使用せずにのびのびと育ったブランド豚。
日々の食卓を彩り、週末には贅沢なメニューで海辺のBBQを楽しめる環境が田原市には整っている。